
2019.08.24 Architecture
旧共産遺産
旧共産遺産
第二次世界大戦、東部戦線における戦いの末ソビエト連邦は勝利を収めました。ソ連側の犠牲者は人類史上全ての戦争・紛争の中で最大の死者数を計上し、民間人の死者を含めるとその数2000〜3000万人というおびただしい数の死者を記録します。ソ連の勝利により東側諸国ではソ連の影響下に置かれた社会主義国を多数生み出す事となりますが、ソ連や東欧の共産党政権は1989年以降に次々と崩壊し1991年についにソ連崩壊を迎えます。
その間多数の独特な建築的遺産を残してきました。
旧ユーゴスラビア各地に残る「戦争の悲惨さ、平和の尊さを伝える」という大義名分の下建造された共産主義プロバガンダ建築・モニュメントの数々。
今では類を見ない不思議なレトロ・フューチャー。
この本には「スポメニック」と呼ばれるSF映画に出てきそうな造形物が多数掲載されています。スポメニックとは、「モニュメント」を意味する戦争記念碑のことを指します。
これらは、“勝利の証”であると同時に“苦しみの証人”でもあり、戦争への怒りの象徴でもあります。
非常に不謹慎ではありますが戦争とは巨大公共事業とも言われており、経済の活性化はもちろん様々な新しいものを発明し、生み出します。(例えば、サランラップ・ティッシュペーパー、缶詰、レトルト製品、点字、ランドセル、正露丸、トレンチコート、腕時計、携帯電話、カーナビなどは戦争によって発明されました)
戦後日本の経済成長も戦争の「屍の上に立っている」のは紛れもない事実なのです。
戦争は絶対に反対ですが、皮肉にも戦争から生み出されたものが現在の我々の平和な暮らしの中で役立っています。
この本に掲載されているモニュメントも大変素晴らしいものばかりです。
それぞれの建築物に関する解説も充実の作品集。
昨日購入したのですが、本当に素晴らしい本でした。
お店に置いてありますので、気になる方はご覧になっていただけますのでお声をかけてください。